肩甲骨から腕にかけての痛みと、人差し指のしびれ
2020.07.28
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肩こりや肩の痛みでお悩みの方、とても多いです。
国民生活調査では体に自覚症状がある人で、「肩こり」が女性の症状1位になっています。
肩こりは慢性症状であり、日々の生活での持続的な負荷により出現するため、長期化することが多く、簡単には改善しないこともあります。
また肩こりや痛みから腕への痺れを併発することも、多く見られます。
この痺れは神経や筋肉が原因になっていることが多いのですが、今回は筋肉の一種である、トリガーポイントにより肩の痛みから腕の痺れを併発されたレポートになります。
腕の痺れはトリガーポイント以外にもさまざまな原因があります。
腕のしびれについて詳しくはこちらもどうぞ
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1.当院での施術例
当院で施術を受けられた患者さん(48歳男性)の一例です。
<症例>
左肩には1ヶ月前から違和感があり、2週間前ぐらいから悪化して左腕、指にしびれが出てきました。内科へ行きましたが原因が分からず、痛み止めをもらって服用しています。薬を飲むと痛みは少し引き、その後整形外科で湿布とビタミン剤をもらって服用しています。肩を温めると、少し楽になります。特に思い当たる怪我などはしていません。指のしびれは常に出ていて、薬ではしびれが取れないので、一度カイロプラクティック施術を受けてみようと思いました。
<初診時の症状>
①左肩甲骨を中心として、周囲が痛い。
②左腕の方まで痛みと、重鈍いしびれのような感じがある。
③左人差し指にしびれがある。
④左腕を右手で支えないとつらい。
⑤元々の肩こりが酷い。
<施術後の経過>
〇施術初回
まず左肩甲骨付近(棘下筋)が盛り上がるように硬くなっており、痛みのための防御姿勢も重なってあまり動かせる状態ではありませんでした。肩甲骨、腕の筋肉を触るとしびれを誘発する状態でした。この状態は症状としては重い部類になります。手技により棘下筋に直接刺激を与えると、より症状が活性化する恐れがあります。そのため棘下筋には物理療法を行い、手技では棘下筋の周辺からアプローチをしました。
〇施術2~4回
物理療法と併せて施術を行なっていった結果、指のしびれは徐々に薄れていきましたが、肩甲骨の周囲の痛みはまだ残り、痛み止めの薬もまだ飲まれていました。
〇施術5~6回
痺れ、痛みともまだ残ってはいるものの、半減しています。施術も肩周辺から全身に広げて、全体のバランスを整え始めました。
〇施術7~9回
その後、3回の施術で痛みも無くなり、現在はメンテナンスに移行しています。
<担当カイロプラクターのコメント>
しびれの原因は肩甲骨筋肉(棘下筋)のトリガーポイントによるものでした。トリガーポイントにより腕への痺れを起こす筋肉はいくつかありますが、棘下筋はその代表的な筋肉の1つです。
また、この患者さんの全身をみてみると、背中の左側の筋肉が全体的に張っており、腰・お尻の方にも影響しているようでした。全身的な施術を始めてからより症状が軽くなり始め、肩の痛みも軽減しました。
このように全身的に筋肉のトーンが上がってしまうと、体の緊張度が取れないこともあります。このケースは訴えられている症状以外にも、目を向けなければならない良い症例だと思います。このような症状は、特にカイロプラクティック施術が有効となるものです。
このケースではトリガーポイントの活性化が強く、棘下筋へ直接手技での施術するのが難しかったのが、症状改善に時間がかかった要因の1つです。今回のような症状がある場合、我慢して時間が経過してしまうと症状の改善が遅くなってしまうことが往々にしてあります。痛みが出た時は早めの来院をお勧めいたします。
2.その症状の原因はトリガーポイントかも!
上肢の痺れというと頚椎椎間板ヘルニアや脳の問題などを思い浮かべて不安になる方も多いと思います。しかし、病院で検査しても異常がなく原因が判明されない方も多数いらっしゃいます。痛み止めをもらうのみで症状が改善せず困っているという患者さんが多く来院なさるのも事実です。そんな原因が分からない痛みや痺れの一つとしてトリガーポイントがあります。
2-1 トリガーポイントって何?
怪我/長時間の同じ姿勢/筋肉への疲労などが原因で筋肉が損傷され、血行の低下が起こり、その結果、筋肉の中に出来る硬いコリ(硬結)として形成されます。圧痛点と呼ばれるものです。その圧痛点の中でもトリガーポイントの特徴は、形成された場所とは離れた別の場所に強い痛みや痺れが現れる関連痛です。
頭痛だと思っていたものが実は首の筋肉に原因があることや、ふくらはぎの痛みを感じていても原因はお尻の筋肉にある場合などがあるのです。
トリガーポイントが形成されると、筋肉や関節が効率よく動かせなくなります。その結果、血行の悪さが起こりまた新たなトリガーポイントの形成にも繋がり、症状の悪化、痛みが長引く原因にもなります。
また神経の障害による痺れとの区別が必要ですが、トリガーポイントと神経障害の症状では違いがあります。
まず痛みの質ですが、トリガーポイントではズーンやジワーとした重い痛みを感じることが多いです。一方神経障害では、ピリピリとした鋭い痛みを感じることが多くなります。
次に痺れの領域にも違いがあります。これは一概に説明するのは難しいのですが、神経の場合、障害を受けた神経ごとに感覚の支配領域が決まっています。そのためその領域以外に症状が出ることはまずありません。そのため痺れのでている領域によりある程度の鑑別が出来ます。
トリガーポイントの場合は、トリガーポイントの出来る筋肉により、痺れの出る場所が変わります。この場合神経支配領域とは関係なく痺れが出ます。触診などの状態と合わせて鑑別していきます。
2-2 症例とトリガーポイント
今回のケースは斜角筋、棘下筋のトリガーポイントが主な原因と考えられています。
棘下筋のトリガーポイントがかなり悪化している状態で筋肉の緩和操作を行なおうと肩甲骨、腕の筋肉を触ると痺れを誘発する状態でした。徒手的療法より患者さんの負担が少なく痛みを誘発しにくい温熱や電気などの物理療法で症状を軽減させ、その後、頚部や肩甲骨を中心に関節の動きをつけ調整し、筋肉に対しては筋膜リリースやストレッチを行いました。
2-3 注意すべきこと
必ずしも、全ての症状がトリガーポイントに当てはまるわけではありません。当院でも徒手的検査で確認は出来ますが100%ではありません。痺れは筋肉、骨格の問題以外にも内臓や血管や代謝の問題などで起こる場合もあるからです。長く続くようなら一度しっかりと病院で診て頂くことをおすすめします。
3.症状を防ぐために自分で出来ること
関節や筋肉の状態を改善しても元に戻ってしまってはまた症状が戻ってきます。当院では姿勢やエクササイズ、ストレッチなども合わせて指導させて頂きます。適切なケアが自分で出来ると、良い状態を保つことや症状の悪化を防ぐことが出来、良い状態を保てます。
3-1 ストレッチを行うときのポイント
- 勢いをつけない → 痛める原因になります。
- 呼吸を止めない → 体が緊張して筋肉が伸びません。
- 30秒以上行う → 筋肉が伸び始めるまでに20秒はかかります。
ストレッチは無理なくゆっくりと行いましょう。
痛すぎず気持ちいいと感じるくらいが目安です。
各ストレッチ 1回30秒×3セット 程出来ると素晴らしいです。
3-2 斜角筋ストレッチ
今回は斜角筋のストレッチとして紹介していますが、同時に胸鎖乳突筋もストレッチすることが出来ます。
2.ストレッチしたい方と反対側に首を回します。
3.後ろに傾けます。
4.斜め後ろを見るような体勢になります。
この時首筋が伸びている感触はありますか?
※この際に気分が悪い、めまいがするなどの症状が出た場合はすぐにストレッチを中止してください!
3-3 棘下筋ストレッチ
今回は棘下筋のストレッチとして紹介していますが、同時に小円筋もストレッチすることが出来ます。
○パターン1
1.まずは姿勢を正します。
2.ストレッチしたい側の手を対側の肩に乗せます。
3.肘を胸の前へ引き寄せるように上へ持ち上げます。
この時肩甲骨周囲から腕にかけて
伸びている感触はありますか?
○パターン2
1.まずは姿勢を正します。
2.ストレッチしたい側の手を腰に当てて、反対側の手で肘を持ちます。
3.肘を可能な限り、前方に引き寄せます。
この時肩甲骨周囲から腕にかけて伸びている感触はありますか?
4.最後に
体の症状を改善するためには「姿勢の改善と機能の回復」が必要不可欠です。
トリガーポイントのように、ただの肩こりではなく、腕への痺れまで出てしまうと、セルフケアのみで症状を改善させるのには限度があります。
今回のケースのような症状の場合は、施術を受けて症状を改善することをお勧めいたします。症状が強いとストレッチすらできない事もあります。
ご自身のお身体の状況を理解し、どう向き合って改善していくかが大切です。当院では皆様の健康なお身体作りをサポートさせて頂きます。
もっと詳しく知りたい方は痛みの原因辞典 腕のしびれへ